音圧について

先日、Beatportでダブステップを聞いたらEDMより酷いことになってました。あんなに音圧があると踊りにくいんですが。。。

よく音圧という言葉を聞くと思います。音圧戦争とか。

とはいえ、DTMビギナーや一般の方はわからないかもなと思ったので具体的に書いてみます。音圧に関してもっと詳しく知りたい方は他の方のブログを参考になさってください。

テレビを見ててCMに変わった途端にめっちゃ音が大きくなってボリュームを下げた経験はありませんか? そっちに携わってないので詳しくはわかんないんですけど、そういう感じで日常的に音圧があるものに触れてます。

音にこだわってる人も人の子、売れたいがため音圧を上げてしまいます。音圧をあげるとなぜ売れるというか売れやすいかというと、極端に言うと迫力が増すからです。

例えばiTunesやBeatport等で曲を試聴してる時、音圧があると聴き映えするんです。試聴の際に高級オーディオ機器ではなく陳腐なノーパソのスピーカーだったら尚更です。代わりに音が小さい曲は適切なレベルを保っていても貧弱に感じ、音が悪いと勘違いされやすいようです。

ここで疑問点が出てくるのですが、高級オーディオではなく陳腐なスピーカーだったらなぜ良く聞こえるのか。

音圧をかけると小さい音が持ち上がり細部まで聞こえやすくなります。ただし全体を底上げしてるわけですから大きい音は割れやすくなります(最近のDAWはよく出来てるので割れにくいですけど)。で、割れてたとしてもそれは「迫力」と捉えてしまう人が大半ですし、割れてることにすら気づかなかったりします。

小さい音が持ち上がり細部まで聞こえやすくなってるので、解像度が低い陳腐なスピーカーでもよく聞こえてしまうんです。高級機器でもなくてもいいのですが、ある程度お金を出した機材で聞くと音が破綻してることに気づくと思いますし、ずっと聞いていられなくなると思います。



音圧を上げてせっかく迫力がある曲にしたのに元も子もありません。

それはなぜかというと全部の音が際立ちすぎて1番音量があるキック以外の音もキックと同等の音量になってしまい常にピークに近い状態なので、一言で言うと「五月蝿い」んです。小さい音までも持ち上がってるわけですから、大音量で聞くともう五月蝿くてしょうがないです。クラブは大音量ですから小さい音を持ち上げなくてもそれなりに聞こえるので音圧は抑えたいところです。


上の波形は音圧を上げてあります。下の波形はさらに音圧を上げてます。真ん中辺りは声のみなんですが、下の波形だとその声も右部のキックと同じくらい大きくなってます。結果、迫力を越えて五月蝿いだけになります。

音圧がありすぎると前の曲や次の曲とミックスするときに馴染みにくくなる欠点もあります。



この波形の曲はこちらです。上の波形がこの曲です。サンクラに置いておくだけなので、ちょっときつめに圧をかけてます。キックが同時に3~4つ鳴ってて落ちかなかったのもありきつめです。これを書いてるのを中断して作った曲ということもあり荒さを残してみました。

聞く人はノーパソが大半だろうと意識してハイを多めにしました。

2:47~から無理がありますけどサンクラだしまあいいかなと思ってそのままにしてます。スピーカーは使わずヘッドホンオンリーです。ヘッドホンオンリーだとこんな感じになりますよという例でもあります。

2:47~は特に圧がかかってるなとわかりやすいんじゃないでしょうか。無理矢理音を閉じ込めてるので声が聞き取れなくなったりしてますし。

これでも他の人に比べたらそんなに圧がかかってなかったりするんですが...。


それではどうすればいいのか。

音が良いと言われてる曲を自作の曲とDAW上に並べて聞きくらべながら波形の相違点を見ます。音が良い曲のドラムが入ってない声だけのところはどのくらいの音量なのかとか、音と音の隙間はどんな感じかとか波形を拡大したりして眺めます。それだけでもかなり勉強になります。

音が良いと言われてる曲なのですが、自分が音が良いなと判断したものよりサンレコで毎月エンジニアがピックアップしてる曲を買ってみたり、他人が音が良いと言った曲を買った方が正しい判断ができるかと思います。テクノやってるのにヒップホップを買うより、テクノの人はテクノ、ヒップホップの人はヒップホップ、と同じジャンルの方が良い結果が出ると思います。mp3ではなくCDと同等かそれ以上のクオリティのものをお勧めします。

機材を見直してみるのはいかがでしょうか。クラブミュージックを作ってるのに、低音が出ない安価なスピーカーやヘッドホンを使ってたらいつまで経っても良い判断は出来ないと思います。

ミックスダウンのやり直しが1番効果があります。2:47~みたいに音が窮屈になった場合、「音を減らすべきでは?」「音は減らしたくないからこの音とこの音のボリュームを小さくしよう」とか「音が大きくなってるのはキックが多いからだ。でもこの音はどうしても残したいから、EQで低音を削って雰囲気だけでも残そう」とか。

マキシマイザーで一気に音圧をかけるよりはマキシマイザー2段がけで2段とも薄くかけたり、リミッターをかけてマキシマイザー、その逆でマキシマイザーを先にかけてリミッターとか色々方法はあると思います。

マキシマイザーを使うとどうしてもシャリシャリ感が出てしまいます。このシャリシャリはEQで潰すよりはデュエッサーを使った方が高音の伸びを保ちながら耳に痛いところを抑え込むことができます。


追記

「ミックスダウン」は下記の2つと音量を揃えたかったのでマスターにリミッターをかけました。

「マスタリング」は、私だったら音圧はこのくらいまでかなってやつで

「マスタリング音圧あり過ぎ」は、クラブでかけると五月蝿いと思います。が、ノートパソコンで聞くと、この「マスタリング音圧あり過ぎ」が1番聴き映えすると思います。「マスタリング音圧あり過ぎ」というタイトルですが、商業ヒップホップやEDMはもっと圧がかかってると思います。マスタリングについてあまり理解してない人もこれ以上圧がかかってます。


波形①

波形②


波形①、波形② ともに上から「ミックスダウン」「マスタリング」「マスタリング音圧あり過ぎ」のの順です。

波形①の曲の頭を拡大したものが波形②です。波形②の波形はほぼキックです。

「ミックスダウン」ではキックが潰れてません。「マスタリング」だと若干抑え付けられてます。「マスタリング音圧あり過ぎ」は完全に潰れてて丸みがかった波形が四角くなってます。聞いた感じだと割れてませんが、クラブで聞くと五月蝿いと思います。


先ほども書きましたが、残念ながら「マスタリング音圧あり過ぎ」が1番迫力があってよく聞こえてしまいます。よく聞こえるだけであって音は決して良くなってないことをご理解ください。とはいえ、売るとしたらこのくらいあった方がみんな飛びつきやすいです...。

音質を取るのか、売り上げを取るのか。難しい課題です...。


マスタリングを施す時に頂くデータで1番よくあるパターンが、すでにマキシマイザーやリミッターが使われてることです。別にステムとかに使われてる分にはいいんですけど、マスターにそれやられるとこっちでやることがありません。

気持ちはわかります。これくらい迫力があるものにしてほしい、これよりもっと迫力があるものにしてほしいとかそんな想いも込められてると思うんですけど、そんな想いは微塵もいりません。持ち上げられたものを元に戻すことはできません。もしそう思ってるのであれば、それはそれで用意してもう一つ「マスターに何もかけてないもの」も用意した方がいいと思います。その時に「このくらい持ち上がったものを希望してます」とメモを添えてもらえるとエンジニアは助かると思います。

ミックスダウンとマスタリングという言葉は多く知られるようになったのですが、こういう例が後を絶たないので実際のところあまりよくわかってないのではないでしょうか。


追記の追記

このスクショの先頭(一番左側)はキックの音です。紫ラインは適正に圧をかけたもの、赤ラインは最近のダブステップなみに音圧かけたものです。緑の囲みを見るとわかると思うんですがキックがぶっ潰れてます。 白い囲みはハイハットです。赤ラインの白い囲みは潰れてキックと同じ音量になってます。本来、クラブミュージックはキックが軸となり1番大きい音で鳴ってなければいけないのですが、そのキックとハイハットが同じ音量になってしまってます。圧をかけすぎるとハイハットに限らずシンセの音なんかもキックと同じ音量で鳴ってたりするわけなので、ただただ五月蠅くなってしまうだけなんです。 音圧をかけすぎた曲をクラブでかける場合どうなるかというと、五月蠅いので音を下げないといけなくなります。スクショの黄色いラインは、赤いラインの音量を下げて、紫ラインと同じ音圧にしたものです。こんなに音量を下げないといけなくなるんです。音圧をかけすぎてしまったために音が潰れてるので波形の上下の差が乏しくなりダイナミクスが完全に失われてます。紫ラインだとキックも気持ちよく鳴りますが、同じ音圧の黄色ラインだと潰れた音のキックが小さい音で鳴ってるだけなので言わずもがな。

DJミキサーのマスターのメーターが常に真っ赤の人とか音が大きければ良いやって人にはわかんないでしょうけど、わかってる人達には使ってもらえなくなります。 (追記の追記終わり)



ミックスCDに関して

クラブでかけるわけではないですし、大半はノーパソやスマホに取り込んで聞くのが一般的だと思います。なので音圧をかけてもさほど問題はないと思います。

ただ、最近あまりにも酷いのが出回ってるのでなんだかなあって感じです。1曲1曲、音量や音圧の差があります。それを一括で処理しようとして超きつめにマキシマイザーやリミッターをかけて1曲1曲のその差をなくそうとしてます。別に悪いことじゃないんですけど、その状態なのに「音が良い」つってる人が多いのでそれはどうかと思うよと。音が良く聞こえるだけで、音自体は悪くなってます。それはわかっていただきたいなと。


音圧は音が割れない限り、あればあるほど良いんだと勘違いしてた時期があったので、そういう勘違いが少しでも減れば良いなと思い書きました。

DJ機器は少なからずもブーミーになるように寄せてあるので、ちょっと足んないんじゃないかなくらいが丁度良かったりするんですけど、やっぱネット販売の場合は他の曲より迫力を見せてナンボなところがあるんで、、、、難しいですよね...。


イラスト 全て ぱいせん